それと入れ違うように来たのは、陸斗のお母さん。





お互いに無言で隣に座ると、陸斗のお母さんがぽつりぽつりと話し出した。





「あたしの旦那は……陸斗の父親なんだけどね。とにかく浮気癖が酷くて、結婚してからも何回もあたしは泣かされたのよ。不倫相手の女からも嫌がらせはされたしね。それでも陸斗がいるんだから、あたし達からは離れていかないと思ってた」



陸斗が母子家庭だというのは知ってたけど、まさかお父さんが……。



「でもね、ある夜にとうとう相手の女と逃げてしまったの。陸斗が中学生になる直前に、あたし達の目の前で、ね。今はどこにいるのか、あたしにも分からない」


「……そんな事があったんですか……?」



思春期の陸斗はどう感じたんだろう?


目の前からお父さんが消えた、その時。



「だから陸斗は言ってた。『俺は、好きな女を泣かせるような真似はしない』って。……でも、本当は違ったんでしょ、睦月ちゃん」


「……はい……」



あたしがいても、浮気をしていた、陸斗。



「睦月ちゃんがいたのに、陸斗は違う女の子を何人も家に上げてた。だから、あたしは陸斗を責めた事もあったんだよ?『睦月ちゃんが泣いてるのが分かんないの !?』ってね」



「あたし…あたしは……」



唇が震えて言葉にならない。



「……でもあの子、去年の暮れぐらいから、全く女の子と遊ばなくなったの。それどころか落ち込んでるようだった。理由は聞いても教えてくれなかったけど、睦月ちゃんと別れたのかなってピンときた」


「……はい。…そう…でした……」


「それだけ、陸斗にとっては睦月ちゃんが大切な存在なのに。なんで浮気なんかしたんだろうね。ほんと、バカな子だよ……」



馬鹿陸斗。

早く目を覚まして。