「元旦初売りでオールはないよねー」

「ソウダヨネー」

「何あんたげんなりしてんの?」




スノボ旅行から帰って正月、元旦。

あたし達は、またせつら達のバイト先に来ている。


せつら達は今日もオープンからラストまでのシフト。ちなみに3日までずっと通しで働いてたりする。



「やだもぅ!初詣行きたいのにぃ!」



きぃぃっと奇声をあげる芽依のことは、とりあえずスルー。




あたしが心配なのはせつらの体だよ。


クリスマスもお正月もずっと通しでバイトなんて疲れないのかな?

あたしは初詣は行かなくてもいいから、たまには休めばいいのに。



店のテーブルに頬杖をついていたあたしの視線に気づいたのか、せつらがあたしを見てにこっと微笑んだ。


あたしも手をあげてそれに返す。


あれから益々せつらにハマっていく自分を、たまにもて余してたりもして。



毎日でも逢いたくて、いつも声を聞いていたくて。



こうして逢える時間は少ないのに、逢えたとしてもあっという間に過ぎていってしまうのが、なんだかとても切なくなる。



「芽依、あたし今日は帰るよ?まだ居たいんだけど……」

「えー。もう帰んの?」

「だって8時半だもん。お父さんがうるさいんだよねー」

「門限9時だっけ?厳しいよね、睦月のお父さん」



本当、子供じゃないのに嫌になる。門限9時とかありえない。



「芽依は阿木さんに送ってもらうんでしょ?ごゆっくりー」

あたしが茶化すと、芽依はシッシッと野良犬を追い払うみたいな仕草をした。


帰り際カウンター近くに寄ってさよならを言うと、せつらが「後で電話する」と短く言った。





せつらのその言葉だけで、あたしは甘い夢が見られるんだよ。




ずーっと一緒にいられたらいいのにな。