わくわくしながら、その本を机に広げて芽依と頭をくっつけて読んでみる。



「……部屋数とかめっちゃ多くない?温泉と露天風呂があるよぉ!」

「露天風呂?混浴なのかな?あー26日がまじで楽しみぃ!」



お、芽依は露天風呂に食いついてきたぞ?


「えー。あたし分かんない。でも混浴って、入るの恥ずかしくない?」

「だってせっかくなら、彼氏と一緒に入りたいじゃん」



芽依に言われた途端に、ぼあっと赤くなるあたしのほっぺたが憎い。



「あ。そうか。睦月達はまだ付き合い始めたばっかだから、そういうことまだヤったことないんだー?」

「芽依声大きい!」


ヤったって!


だってまだ付き合い始めだし。テスト終わったばっかりだし。




下を向いてブツブツ言っていると、不意に頭の上に影がさした。




「………うるせぇよ」


不機嫌そうに言い残して、陸斗があたし達の机から去っていく。




「なにあれ。気分わるーい」

「もういいじゃん。ほっとこうよ」



あれから、陸斗のことが気にならないと言えば嘘になる。


たまにちらっと陸斗の方を見ると、よく視線が合ったりするから気まずくて、すぐ顔を逸らすけど。


クラスの噂で聞いただけだけど、あたしと別れてからは陸斗の回りには女の子があまり寄ってきていないみたいだ。


なんでだろ?



あたしから解放されたんだから、遊びたいだけ遊べばいいのに。



教室からも立ち去る陸斗の後ろ姿がやけに寂しげで、あたしは一瞬追いかけようかと思い悩んだ。


だけどあたしを呼ぶ芽依の声に引き留められる。



「……忘れなよ」


そうだよね。


せつらには『わだかまりはない』って答えたんだから、今はせつらの事を見てないと。