続けてもう一口…と、掬った桃は、私の手ごとさらわれて氷室さんの口の中に消えた。


「桃一切れしかないから、半分ちょうだい」



あたしダメだ。



また顔が赤くなってるのが分かる。



それからもクリームあんみつをお互いに食べさせたり食べさせてもらったりして、ようやく食べきった。


味なんて、ほとんど分かんなかった。


だけど、なんだか甘くてすっぱいようなあの味だけは覚えてる。

「睦月もさ『氷室さん』じゃなくて、名前で呼んでよ?」


帰りの車の中で言われた一言。


「名前……」



氷室さんの名前って何だっけ?



「雪羅。すげぇドキュンネームだろ?」

「せつらって漢字、どう書くの?」


雪に羅。そう教えてもらう。