放課後、約束通り、氷室さんの車が校門の前に停まっていた。


「ごめんなさい。遅くなって」

「いーよ。乗って?」



さりげなく助手席のドアを開けてくれる氷室さんは紳士だ。



「今日はこの後、何か予定がある?」

「明後日から期末テストで……。勉強しないとまずい、かも」


二学期末テストが終われば、あとはもう楽しいことだらけの冬休みが待ってるんだけどな……。



「なら俺が教えてやんよ。ちなみに苦手科目は何?」

「数学と英語。リスニング超分かんない」



むー、と膨れて通学鞄の中から教科書を取り出した。



「じゃあ今日は図書館行きに決定な」

「はーい」




そう言って車は走り出した。




不意に窓を見ると、女の子の腰に手を回した陸斗がこっちを凝視しているのがサイドミラーに映っている。



陸斗に意識をとられたのはほんの一瞬で、その後は氷室さんとの会話に引き込まれていた―――。