金色の眩しい太陽の日差し、一筋の汗が額に流れる。

セミの鳴く音、蒸し暑い空気、雲一つない真っ青な夏空。


僕は、早く姪に逢いたくて、急いで帰ってきた。

荷物を持って、この暑い中息を切らしながら坂を登る、35歳の僕。



9年前ーーー



僕が海外へ長期出張へ出るとき、幼い姪は僕の胸に抱きつき、「行かないで」と泣いていた。

僕も離れたくはなかったけれど、小さな手を離し、海外へ旅立った。


海外で生活している間、片時も姪のことを忘れることなんてなかった。

時々、手紙や電話で連絡しあい、日々の出来事や、お互いのことを語り合ったりしていたことが昨日のことみたいだ。


あれから9年ーー

やっと海外での仕事が落ち着き、現地で仕事が出来ることなった。



これからは、可愛い姪とずっと一緒にいられる。

まだ僕の中では、あの幼い姪のままで時が止まっている。



小さな背、ショートカットの黒髪、小さな頭、幼い容姿、小さな指、こんがり日焼けした小麦色の肌ーー


僕は、そんな幼いままの、10歳の姪しか記憶にはない。


汗を流しながら坂を登りきると、姪が暮らしている小さなアパートがあった。



なんと姪は、一人暮らししているのだと僕の妹から聞いた。

あんな幼い姪が一人暮らししているなんて、絶対危ないじゃないか。

僕は大きなバッグを持ち、姪の暮らすアパートに入った。


とても小さくて、築年数が古いのか酷く痛んでいる様だ。

階段もサビつき、足で体重をかけただけで、ギシギシと音が鳴る。

僕は、こんなところで姪が暮らしていると考えると不安な気持ちになった。

セキュリティも何にもない、外から洗濯物が丸見えになっている。


ーー…こんなところ、何があってもおかしくない。

あんなに幼い姪を、こんなに危ない場所に住ませるのは危険過ぎる。

僕は妹から聞いた部屋の番号を探し、二階に上がった。
階段は、いつネジが外れて落下しても、おかしくないほど痛んでいる。

ここの管理人は誰なんだろう。
住人から集める家賃で、少しずつ改善していけるはずだ。

せめて、セキュリティの強化や、この階段を改築するとか考えるべきだ。

僕は姪の部屋の前に、ひとまず大きな鞄を地面に置いた。



ーーやっと、9年間待ちに待った姪と逢える。



僕は高鳴る鼓動を抑えながら、人差し指で古びたインターホンを鳴らした。

少ししてから、奥の方から玄関に向かって小走りしてくる足音が聞こえた。


僕はハンカチで流れる汗を拭き、姪が玄関のドアを開けるのを待った。

まず、なんて言おうか。

そんなことを考えていると、玄関のドアがゆっくりと開いた。



ドアを開けて現れたのは、幼い姪…じゃない。

綺麗な長い黒髪に、色白で透き通る様な肌が眩しい。

スラッと長く伸びた手足、綺麗な指、少し幼さが残るが、大人びた容姿。

大きく膨らんだ胸に、引き締まったウエスト。

白色のキャミソールにジーンズ素材の短パン姿の女性だ。

僕がぼーっとしていると、女性はにこっと優しく微笑んだ。


「お帰りなさい、叔父さん」

ああ、ずっと電話越しに聞いていた姪の声だ。


あれから9年もの月日が流れる間、姪は綺麗な女性に成長していた。

それは、暑い夏の日のことだ。


僕の頭の中で何かが、弾けた。