「おーい、お前らっ。
そろそろ行くぞー」
ハノイの呼び掛けに、ウルドははっと現実に戻った。
「はーい、兄貴」
「了解ー」
ロキとエデンは反応を示し、ハノイとウルドのもとへと走る。
その二人にイオとアルも続いた。
「ウルドっ」
イオは真っ先にウルドのもとへとやって来た。
イオは栗色の柔らかな髪を仄かに茜色に染め、ウルドに笑いかける。
「あのね、これ誉められたんだっ」
イオが指を指したのは、露店で購入したあのハートのピアス。
「そうか。それはよかった」
ウルドは小さく笑みを溢す。
こんなとき、ウルドはなんて返せばいいのかわからないのだ。
だから少し素っ気ない返事になってしまった。
「うわー、ウルド他人事みたいに言うんだー。
素っ気なーい。
私のハートと、ウルドのスペードはセットなんだからね」
イオはやれやれと肩を竦めている。
「あ……ごめん」
ウルドはイオにたじたじだ。もうすっかり尻に敷かれている。
困ったような顔で、おずおずとイオを見つめるウルド。
そんなウルドを見たイオの表情は自然と綻ぶのだった。
「?」
イオがふふっと笑った理由がわからないウルドは不思議そうに首を傾げた。
「んー。
やっぱり喋りが得意なウルドなんて逆に変だもんね。
素っ気ない返事でも許す」
イオはウルドに子供のような笑顔を向ける。
夕焼けに照らされた優しい笑み。殺風景な夕日の荒野の中、一段と輝くイオの幸せそうな顔。
「――イオ、今幸せか?」
ウルドの静かな問いに、イオは深緑の瞳をふわっと細める。
「うんっ。とっても幸せ」
イオの耳元でハートのピアスが揺れた。