「ウルドってあれだよな…」
アルとハノイは苦笑い。
「―――よし。
荷物を纏めて、出発の準備をしようぜ」
ハノイの呼び掛けに、一同はあたふたと準備に取り掛かる。
横転した風力車から何とか荷物を引っ張りだす。
旅の荷物を改めて確認しているイオとウルドから少し離れた場所……。
傷付き、悲惨な姿になってしまった愛車を愛しげに見つめ、立ちすくむアル。
やりたい事も見つからず、ただ仲間と荒野を駆け抜けていた“走り屋”だった若き日の自分。
あの日からずっと…。
“運び屋”になった現在までずっと一緒に走ってきた愛車。
「――町に着いたら、修理できる用意をして迎えに戻るからな…絶対に」
唇を噛み締め、天を仰ぐ。痛む目の奥。
「―――と、よしっ。
大体荷造りは終わったみたいだな。
もうすぐ出発しようぜ」
ハノイの声に一同は振り返ってびっくり。
唯一驚かないのはウルドくらいだ。
ハノイ、ロキ、エデンの三人の姿…。
赤、黒、灰色の飛龍。
美しくしなやかな身体は大きく、翼をはためかせる姿は見る者の目を奪う。
“飛龍”
こんなにも美しく、こんなにも屈強な魔。
「―――おい…そんなキラキラした目で俺を見つめんなよ」
呆れた様子のハノイは、ぶるんと身体を震わせた。
その豪快な動きに、イオは無邪気に手を叩いて喜んだ。
「ハノイだけどハノイじゃないみたい」
イオの言葉にアルは深く頷いた。
「―あ。
そういや誰が誰を乗せるんすか?」
ロキの一言に、ハノイは満面の笑み。
「やっぱイオちゃん担当は俺っ!」
イオにウィンクするハノイ。
イオの隣に立つウルドはそっと眉を潜めた。