状況が読めず、ぽかんとしているハノイのもとへ、ロキとエデンが駈けてきた。


「よかったっすね…兄貴。一時は本当に死んでしまうんじゃないかって――」

「命拾いできてよかったですね。
イオさんに感謝しなくては…」



二人はハノイに抱きつき、おいおい泣いた。

二人の涙がハノイの服を濡らす汚す…。




当然ハノイが黙って許すわけもない。



「おいっお前ら。俺の服が汚れちまうだろうがーっ。
それにお前ら、泣きすぎだ。男なんだからしっかりしとけ」


ハノイの威勢のいい声に、ロキとエデンは顔を見合わせて頬笑んだ。


「やっぱりハノイの兄貴はこうでなくちゃ」



ロキの言葉に、ハノイは照れ臭いのか、ぷいと外方を向いた。







「―――あのー?
いい雰囲気のところ悪いんですけど…この後どうします?」


イオの発言に、一同は改めてこの場所の現状を確認する…。





横転し、悲惨な状態のアルの風力車。
それに倒れかかるようにして横たわるハノイ達の風力車。





寂れた荒野に、一陣のつむじ風。



余計に寂しくなり、無言のまま立ち尽くす一同。






「――――俺の愛車…使えそうにないかも…」


ぽつりアルは呟いた。
泣いているようにも見えるアルの表情に、ハノイ達は急に是非とも謝りたい衝動に駆られた。



否、寧ろ謝らなくてはならない事態。


盗賊しようとして、アルの愛車を無理矢理倒した結果……こんな結末。



ハノイ達だってまさか返り討ちにあうなど、考えてもみなかっただろうに。








「―――すいませんでした。もう盗賊なんて馬鹿なこと止めます…」




盗賊三人組は地面にひれ伏し、アルに土下座。

これが世の常。




土下座しながらハノイは頭だけ上げ、アルの顔を見やった。






「――俺らの風力車も使えそうにないし…お詫びといっては難だけど、俺らがあんた達を町まで運ぶ。

否…運ばせてくれ」



ハノイの真剣な目付きに圧倒されながら、アルは頷いてみせた。