アルは目の前のウルドの後ろ姿に見入ってしまった。


目の前に立つ黒いロングコートに映える色素の薄い金髪の男が、先程まで仲良く話をしていた客だとは思えなかった。



雰囲気が違すぎる。


禍々しく湾曲した大鎌の刃。



まるで死神のような姿。







「なぁ…ウルドは何者なんだ?」




アルは小言でイオに問う。
その答えだというように、イオはにっこりと笑った。


「――孤独からの“救世主”かな」




首を傾げるアルを横目に、イオはウルドに向き直ってしまった。






“孤独からの救世主”




その言葉が示す深い意味をアルは知る由もなかった。





























「金髪さん…中々やるねぇ。
もしかして殺し屋だったり?」



赤髪のハノイはへらへらと笑いながらも、華麗にウルドの攻撃を避ける。




「殺し屋……ね。馬鹿馬鹿しい」



ウルドはハノイを軽くあしらうように皮肉な笑みを浮かべると、大鎌をなぎ払った。



リーチの長い大鎌。
鋭く空を裂く鎌の軌道。
ハノイの頬すれすれを掠める。





「……った、危ねぇ。
容赦ないな」



ハノイは頬を擦り、肩を撫で下ろす。
滲む冷汗。






「―――戯れ言はもう十分だ」



ウルドは攻撃をことごとく躱すハノイに苛ついていた。



当たりそうで当たらない…。

焦れったいこの気持ち。





「……畜生」



ひとつ呟いたウルドは、鎌の攻撃を一旦緩めた。




その変化にはハノイも当然気が付いたようだ。




「………金髪さん、戦意喪失したわけ?」



最初はおどけていたハノイ。
しかしその表情は一瞬で凍りつく…。







“渦巻く風は大蛇の如し
絡み付き離れない呪縛”



唄うように囁くように…。

イオやアルたちに聞こえないように詠唱したウルドは無表情に笑った。