ボフッ




「あぃたたたた…」



イオは腰を擦りながら辺りを見渡した。




座席が横になっている。
横転してしまったようだ。





「うわぁ……なんか最悪。

――――て、ウルドは?」




イオは車内に見えないウルドの姿を探した。



まさか誘拐…?
綺麗な顔してるから?




しきりにキョロキョロと辺りを見渡すが、見慣れた金髪は見当たらない。





「ウルドぉーっ?」



声を張り上げ、必死になり叫ぶイオ。






「イオ……俺、ここ。
イオの下敷き」





ぎょっとして下を見る…。

見慣れた紅い双眼。
色素の薄い金髪。



へたれなこの人物…紛れもなくウルド。





「ウ、ウルド…。
ごめん、ごめんなさいっ」



急いでウルドから退き、イオはウルドに謝る。謝りまくる。





「ん?別にいいよ。
イオ軽いし…」



ウルドは当然ながら怒らない。


寧ろウルドは満足だった。掛け替えのない存在、イオを守ったのだから。





「ウルドは優しすぎるよ…。本当にごめんね。


手、握っててくれてありがと」




イオの笑顔。



これだけで充分。

イオの笑顔は、ウルドにとってはどんな宝石よりも価値のあるもの。







こんな幸せ、いつまでも続けばいいのに…。




無理だと知りながらも、願ってしまう自分が疎ましい。










バキンッ…




扉が蹴り破られる。



「おい、出てこいっ」




荒々しい声は盗賊のものだろう。



密かに武器を用意し、イオとウルドは渋々、客席を出ていった。