「一瞬だったね。何だか夢を見ていたような気分…」
イオは先程までの出来事を整理しようと思考を巡らせていた。
ウルドもそれは同じようで、紅い瞳で森の神殿を眺め考えていた。
夕日に染まる森が美しく、物悲しく思える。
随分と長い間、神殿内にいたようだ。
「お宝…無くて残念だったな」
ウルドがイオに言葉をかける。
そう、当初の目的に宝探しというものがあった。
神殿に入る前、張り切っていたイオ。
しかしイオの明るく爽やかな表情から、別に残念でもなさそうだ。
イオは気分上々、ウルドに歩み寄り、くるっと一回ターンしてみせた。
「……!?
な、何?」
ウルドはリアクションに困っている。
あたふたとする普段のウルドに戻った様だ。
「ふふっ」
イオに笑われた理由がわからず、ウルドはショックを受ける。
ウルド、こう見えて実はとても感受性が豊か。
ちょっとのことで傷つくガラスのハートの持ち主。
ウルドは白い頬を紅潮させて、どうしたことか足で地面をえぐり始めた。
ウルドのごついブーツが地面をえぐる様は森林破壊とも見てとれる。
「ウルドーっ。お願いだから森壊さないでー」
イオの必死の制止により、ウルドの奇行は治まった。
「ウルドって何かに熱中すると周り見えなくなっちゃうタイプ?」
イオの問いの意味を理解できずにウルドは目を丸くした。
「まあ、いいや。
いつものウルドに戻ったしね」
イオの意味深な笑みに、ウルドは半歩後退った。
「いつもの俺…?」
ウルドは自らを指さして首を傾げている。
「そう、いつものウルド」
イオは満面の笑み。
「神殿の中にいた時のウルド、まるで別人みたいに惚けてなかったしさ…。
違和感あった」