扉の向こう。

神殿の最深部。




神獣の広間は大小様々な植物が根を伸ばしていた。



太陽の光が届かない地下にこんなオアシスがあるなんて驚きだ。



イオは興味深く広間を見渡してみる。



まだウルドの姿がない…。

少し不安になった。









見たところ広間の奥の方が特に植物が多いようだ。 

何かを守るかのように、茨が幾重に絡み合い、近づくことすら叶わない。




この茨に守られて眠るは間違いなく神獣ウェリムーザ。




かつて感じたことのない程の緊張感にイオは気分が悪くなってきた。






「早くウルド…」





振り向けば、自分が出てきた扉含め多くの扉。



この中のどれかからウルドはでてくる…。
そう信じた。






















どれだけ待っただろう。



音もなく数ある扉の一つが開いた。





色素の薄い金髪に紅い瞳。

もうすっかり見慣れた、お馴染みのあの人。





「遅くなって悪かった」



疲れた表情。
しかしイオに小さく微笑みかけるウルド。




やっと合流できた。



何だか長い間離れ離れになっていたような気分だ。





「ウルドーっ」



イオは嬉しそうにウルドに駆け寄り、満面の笑みで迎える。



ウルドは照れたように少し目線を反らした。







「ここが最後の部屋…」




ウルドの呟きにイオは頷いて反応を示す。




結局探していたお宝もなく、当初の目的を大分脱線して此処まで来た。





ウェリムーザに導かれたのだから仕方がない。






全てが必然というなら、この結末も偶然ではない。



ウェリムーザ。



神獣は未来までも見える、人間を超越した存在。





どんな話が聞けるのか、二人は不安を感じていた。