光が止んだ後、ゆっくりと目を開いたイオとウルドの目の前には確かに道があった。




瞳を失った四体のオブジェに護られるように、地下へと続くであろう暗い階段が存在していた。




先程の地鳴りの正体はこの階段を出現させる為の仕掛けの作動音だったようだ。





互いに顔を見合せる…。

どうしても確認したいことがあった。





「私たち、神獣ウェリムーザと話したの…?」



「そうみたいだな…。
信じがたいけれど夢なんかじゃなかった」




互いに状況確認。
神獣は最深部で自分らが辿り着くことを待っている。



この闇へと続く階段の先に待つ試練…。


恐らく此処に訪れた旅人の多くは試練を受け、命を落としたのだろう。







もう何が起きても不思議ではない。
召喚師でもない自分たちが神獣に会うとなると、それ相応のことをしなければならないだろう。






ウルドは階段の奥に、多くの魔物の気配を感じた。
蠢く“それ”らは一筋縄ではいかない敵だろう。




きつく握り締めた武器。
愛用の大鎌は血に飢えた魔物の如く、鋭い刃をぎらつかせている。


なんだか自分の心の影の部分に似ている…。
ウルドは思った。





虫も殺さないような性格が表。しかし心のどこかで大鎌で敵を斬り裂くのを楽しんでいる。





思わず身震いしてしまう程、自分という存在が恐い。

段々と人間らしさを失っていく自分。
姿だけではなく心まで…。



イオが綺麗だと言ってくれるこの瞳だって同じ…。
異端の象徴でしかない。





隣で笑っているイオがいつか、変わり果てた自分の姿に絶望してしまうかもしれない。


拒絶されたらどうしよう。それ以前に自分が自我を失って、イオを傷付けてしまったら…。







試練では自分と向き合わなくてはならない。

ウェリムーザの言う“確かなる心”を自分は持っているのだろうか。



偽りの心では試練は乗り越えられない。



ウルドは瞳を閉じて、深く息を吸い込んだ。