最後の壁画…。
横たわる大蛇、残された瞳の宝石の色は緑。



「最後…やってみるよ?」


イオの声は緊張で震えていた。


緑の宝石を壁画にはめることで何が起こるのかは誰にもわからない。


謎解きにより新たな道が現れるかもしれない。
祭壇などが仕掛けにより、出現するかもしれない。



しかし嫌なパターンも考えられる。

例えば強い魔物の出現、神殿の崩壊…。






「―――大丈夫だ。
何が起きてもイオを護るから」



ウルドの紅の瞳には強い光が感じられる。

揺らがない瞳。


イオの背中を押すには十分すぎる言葉だった。



「うんっ」



心を決めたイオはウルドに微笑むと、そのまま宝石を壁にはめた。



綺麗にはまった四つの宝石。未完成だった壁画に命が宿る。





ゴゴゴ…………




予想通りというのか、地鳴りのような音が近づいてくるのを二人は感じた。



地震なのか、何らかの仕掛けが作動したのか…。




「何が起こって…」


イオは言葉を上手く紡ぐことができず、ただウルドの手を握った。

ウルドのひんやりとした手もぎゅっと握り返してくれる。




ゴゴゴ……



相変わらず、不気味に近づいてくる音…。

ついには足元から…。






「見て……光が」


イオの視線の先には四枚の壁画の大蛇の瞳。


金、赤、青、緑…。


生きているかのように瞳の光は明るさを増し、広間を包みこんだ。




眩しさに目が眩み、二人は咄嗟に強く目を瞑った。



耳鳴りと地鳴りと…。
不思議な感覚に浸る。


深い深海に取り残されたように漂っている心。





『我、森を司る者なり。

試練を受ける者達よ…。汝らが確かなる心を持ってすれば、自ずと道は開けるであろう』





深く轟くような声が意識の海から自分を引き上げる。
わかる…。



彼がウェリムーザ。



『我が汝らを導く…。
恐れなど捨てるがいい。


我に続く道は開けた』