訪問者を迎える、石で出来た彫刻。蔦が絡み付き、凄い有様。
恐らくここに祀られている“神獣”をかたどったものなのだろう。



さすが森を司る神獣の神殿だ…。色鮮やかな植物が主を護るかのように咲き誇っていた。
草木が邪魔して中々入り口に辿り着けない。






「うっわー。これは想像以上…」


イオは神殿のあまりの荒れように声を上げずにはいられなかった。




「これじゃ村人もそう近づかないな…。

この辺り、何となく空気が違う」



ウルドもイオに賛同。
荒れ放題荒れているのだが、神聖な雰囲気を失っていないこの場の空気に圧倒されていた。





ウルドは、本当に行くのか?とイオに目でサインを送る。



もしも神殿内でずば抜けて強力な魔物に出会ってしまった場合、イオをしっかり守れる保証はない。





「ん?そんな心配そうな顔しないっ。

二人で力を合わせれば大丈夫だよ」




その自信は一体どこからくるのだろう…。

ウルドはイオに聞こえないくらいの小さな溜息をついた。







「よし、潜入開始」



明るいイオの合図に、二人は互いの武器を構えた。

イオは不思議な彫刻の施された剣を、ウルドは死神の持つような大鎌を。




二人は入り口までの草木を凪ぎ払いながら進む。




地道すぎる作業…。






「草刈り…というか奉仕作業だ。
俺の場合特に……」



ウルドは自らの持つ鎌を一瞥し、また溜息。



イオを見ると草刈りを存分に楽しんでいるようで、剣を思う存分振り回している。

ウルドにイオ程素直に暴れるようなことはできない。



しゃがみこんだウルドは鎌の柄を短く持ち、まさに草刈りの如く地道に作業する…。







「炎で焼き払った方が絶対早いだろうに…」



そうは呟くものの、ウルドは草刈りを続ける。


あまりイオの前で、術を使うのはよくない。

それは人間には使えない力だから…。









二人が入り口に辿り着く頃、もう太陽は空たかく輝きを増していた。