二人が村を一通り見て回った頃、村には明かりが灯り始めていた。


小さな村はぼんやりとした淡い光に包まれ、昼間とは違う雰囲気を放っている。

古めかしさを感じさせる石畳。どこかから聞こえる軽快な音楽。



イオは辺りを興味深々に見回している。
人混みの中、はぐれないように離れないように繋いだ手。
ウルドも特別な村の空気にすっかり呑まれていた。




「祭でもあるのかな?
すっごい綺麗…」


イオの呟きにウルドも賛同する。


人々の弾ける笑顔が行き交うこのメインストリート。
今日が特別祭の日なのか、いつもこうなのか…。





「なんか食べよっか?」


ふいにイオが言う。
そっと指差した先は小さな喫茶店。



「ああ、イオがそう言うなら」










イオが店の扉を開けると、カランと可愛い音がした。


村の派手な賑わいとは対照的に、落ち着いた趣のある喫茶店。


二人以外にも数人の客が談笑している。




「いらっしゃい。初めてお目にかかりますね…お客さんは旅人ですか?」



この喫茶店のマスターらしき男性がイオとウルドに声をかけてきた。



「はい、旅人してます」


イオの返答に人の良さそうなマスターはにっこりとし、二人をカウンターへと案内する。




「今日は祭でもあるんですか?
この村のこと全然知らなくて」



イオの疑問にも嫌な顔一つしないマスター。



「違うよ、ここはいつもこうさ。
君たちみたいな旅人も多く集まるし、世界では認められない者たちが多く暮らすこの村だから、毎日お祭騒ぎでも大丈夫なんだ」



「へぇ。すごい賑やかでいいですね」



窓の外を眺め、イオは目を細める。
いつでも賑やかで笑顔溢れるこの村の風景…しっかりとこの目に焼き付けておきたかった。


またいつか訪れたときの為に。





ふと隣に座るウルドを見る。ウルドはじーっとマスターを見ていた。


「俺の顔に何か付いているかい?」

マスターが気まずそうに苦笑いし、ウルドに問う。