一方のウルドは森の中でせっせと薪を集めていた。

暗い森は不気味だし、灯りなしでは足元さえ見えないのだが、ウルドは気にしていないようだった。


実際、暗い中でも目が利くので困ることもない。

しかし灯りを持たなかったことで、イオに自分の化け物的な要素がばれてしまうのではと少し後悔した。




集めた薪を両手に抱え、イオの待つ場所へ戻ろうとした時、ウルドを激しい動悸が襲った。
せっかく集めた薪はウルドの手を離れ、地面に広がった。


身体中が熱くなり、自分がおかしくなる感覚。

あまりの激しさに立っていることすら困難になり、膝から崩れるように地面に蹲った。



「……く、そっ、どうしてこんなときに‥‥」


息も絶え絶えになりながらも、自由のきかない身体に鞭打って立ち上がる。



こんなときにも真っ先に浮かぶのはイオの姿。一人で自分を待つイオの姿だった。



今に始まったことじゃないこの動悸。起こるのは決まって日が落ちてから。
これが何を意味しているか、ウルドは何となくわかっていた。




「は、早く…イオのもとへいってあげなくちゃ……。俺が、守るって決めたんだから…………」



近くの木にしがみ付き、まだ荒い呼吸を整える。


小さな痛みに手のひらを開くと、握り締めすぎて爪が食い込んだのか血が滲んでいた。



「…ちっ」


思わず舌打ち。


傷口に軽く手をかざす。
途端に白く微かな光が発され、傷が塞がった。




重たい身体を引き摺るように散らばった薪を拾い、イオのもとへと急いだ。