「じゃあー、ウルドは何したい?」
イオは大きな鞄から食材や調理器具などを取出しながら聞く。
「じゃあ俺は…薪探してくる」
ウルドはそう言うと、薄暗くなり始めた森をちらりと見やった。
遠くで聞こえる獣の鳴き声。恐らく魔物だろう…。
イオの頭に真っ先に浮かんだのは、凶暴そうな巨大な魔物の姿だった。
思わず身震いしてしまう。
「なんかやばそうだよ…この森。
ウルド一人で大丈夫?」
深刻そうな表情でイオはウルドに問う。
こんな暗がりの中、こんな危険そうな森を一人で出歩くのは、さすがのウルドも恐いのではないかと考えたのだ。
しかしそんなイオの心配を余所に、ウルドは平然とした様子で足元の雑草をいじくっていた。
ウルドの顔からは想像もできない可愛らしい行動にイオの顔も緩む。
「…おーい。
もしもーし?」
込み上げる笑いを堪え、イオはウルドの視界を一瞬手で遮った。
ウルドは反射的に振り返る。
「あ…
悪い、夢中になってた」
ウルドは思い出したように立ち上がる。
暗がりの中、紅い瞳がやけに目立つ。
「ううん、ウルドが一人でも大丈夫そうだからそれでいいよ」
にこーっとするイオにウルドが一言。
「言い忘れてたけど…俺が薪集めに行ってる間、イオも一人でここに残るだろ。大丈夫か?」
ぎょっとするイオ。
自分が一人になることに今の今まで気が付かなかったようだ。
「うはっ。そうだった…。ウルドがここを離れたら、必然的に私も一人じゃん」