間近で感じる視線にウルドは一歩後退る。
しかしイオも一歩歩み寄る。
困ったようにまた一歩後退るウルド。
しかしまたしてもイオに近づかれる。
「……」
顔を赤らめ、目線をイオから反らし、ウルドはめげずに後退する。
そんなウルドを面白がり、イオはウルドの高い鼻先につんと触れてみた。
「………っだぁ」
ウルドは突然のことに声を上げ、後ろに飛び退いた。しかし、着地の際バランスを崩し後ろに倒れてしまう。
「だ、大丈夫ウルド?」
ほんの悪戯のつもりがまさかこんなことになるなんてとイオは慌てた。
ウルドは頭を押さえ、痛そうに顔を歪めている。
「ごめん、私のせいっ」
手を合わせて謝るイオは心なしか涙目。
「あ…構わないから泣かないでくれ。俺が……悪いんだ」
頭を押さえたままゆっくりと立ち上がりウルドは切なげに言う。
紅く弱々しく瞳を細めて。
「いやいや、どっからどう考えても私が悪いよ。
だからそんな切なげな顔しないで。
ほら、今は野宿の話してたじゃん。続き続きっ
私は野宿で大丈夫だから」
イオの言葉にウルドは少し考え込む。
斜め上を向いて少し考えた挙句、一度大きく頷いた。
「イオがそう言うなら…」
「よしっ、決まりー。
早速準備しよう」
ウルドの言葉を待っていましたというように、イオは元気よく拳を茜空に掲げた。どうやらこういうイベントが好きらしい。
「……」
一応空気を読んでかウルドも拳を小さく突き上げた。