イオとウルドは出会った町を出たところにある森をただ歩いていた。




「なんだかここ、魔物多いね。ちょっと疲れてきた」

ため息まじりに言うイオ。
見渡す限り木、花、草、キノコ…。
そして目の前には獰猛そうな熊…のような魔物。
今にも飛び掛からんとばかりに唸り声を上げている。


「確かにこの森の魔物の多さは異常。
目障りだ…」


イオに返事しながら、ウルドは鬱陶しそうに大鎌で魔物の群れを凪ぎ払う。
その視線はイオに向ける視線とは違い、冷酷なものだった。


群れがたった斬撃一発で一瞬にして消え去ったことから、ウルドの大鎌の威力は相当なものらしい。


そんなウルドの強さを目の当たりにし、イオは喚声をあげる。



「うわ…。ウルド恐いくらいに強いね。
私も負けてられないな」


イオは微笑むと剣を構え、地面を蹴った。軽い身のこなしで舞うように敵に切っ先を突き付ける。

その瞳は普段の優しいイオとは違い、鋭く真剣な瞳。命あるものを斬ることへの覚悟がひしと感じられる。


剣は弧を描くように振りかざされた。
魔物の断末魔の叫び。
一瞬で消える命。



「ふー」

イオは汚れてしまった剣を足元の雑草で拭いた。


一人で旅していたイオもまた、剣の腕はいいようだ。





二人が力を合わせこの辺りの敵を一掃した頃、森は夕焼けに染まっていた。

疲れも溜まり、町まで戻るのは大変そうだ。



「野宿…?」

イオはウルドに尋ねる。


「俺は構わない…。けどイオは女だから野宿とか嫌じゃないのか?」


ウルドは大鎌を邪魔にならないように地面に刺した。

夕日に輝く栗色の髪をふわっと揺らし、イオがウルドに歩み寄る。


じーっと顔を近付けてじろじろウルドの顔を伺った。