「――ウルドには何か秘密があるのかもしれねぇな…」


最後にハノイが溢した一言に、イオはウルドと出会った夜のことを思い出した。



「そうだ…私、ウルドのことよく知らないんだ…。

いつかウルド自身のこと話してくれる約束だったんだけど、それも今じゃ叶わない夢だね……」


イオは苦し紛れに笑ってみせた。しかしその笑顔は、ウルドに振りまいていた眩しい笑みではなくて、諦めたような笑み。


本当は辛くて悲しくて仕方ないのに無理して笑うイオに、ハノイたちの胸は痛んだ。






「――イオは諦めちゃっていいのか…?」

ふいにアルが言った。


その一言にイオは、自分がウルドのことを諦めかけていたことに初めて気付く。



“駄目。このままでいいはずがない。

ウルドは私の光になってくれたんだ。今度は私がウルドの光にならなきゃいけないよね…”


イオは、悲しみで忘れていた本来の自分を取り戻す。

泣いてなんかいられない。ただ前を向いて、光を…君を探しに行くんだ。




「そうだよ…、そうだよね…。

私、諦めないよ。ウルドを探す。

ウルドの秘密なんて構わない。ウルドに何があっても、私はウルドのことが好きだから」


アルを見据えるイオの深緑の瞳は揺らがなかった。
凛とした声は、決意の表れ。



「よかったー。やっとイオちゃんらしくなったね」

安心したようにエデンがくしゃっと笑った。


「はい、はい、質問っ。
その“好き”ってlikeの方?loveの方?」


手を挙げて追求するロキに、イオは少しだけ顔を赤らめた。


「さ、さぁ…?」

イオは曖昧に言葉を濁す。


“ウルドのことが好き”

それは紛れもない真実。
しかし、イオには正直わからなかった。この“好き”という感情の意味が。



「とぼけるってことはやっぱりそうなのかぁ…?

ああー、ドンマイ俺」


イオに多かれ少なかれ好意を持っていたロキはしょんぼりとうなだれたのだった。