「――はぁ…よかった。
ばれてないみたいだ」


小さく安堵のため息を吐くウルド。


おもむろに甲冑に目を移す…。
もう炎や魔法陣は消え果てており、少し焦げ付き黒ずんだ甲冑が二つ残っていただけだった。


糸の切れた操り人形のように、ぐったりと動かないただの金属製の鎧。もう動きだすことはないだろう。





「ウルドー、幽霊もういなくなっちゃったみたい。

あーあ…見たかったなぁ…」


残念そうに肩を落としながら歩み寄ってくるイオに、ウルドはぎこちなく笑い返すしかない。


幽霊なんているわけない。自分が咄嗟についた嘘なのだから…。



「イオ……ざ、残念だったな…」


罪悪感からか、声が震えるウルド。

しかし、イオはそんなウルドの不自然な吃りも気にならなかった。



何故なら、それよりももっと引っ掛かることがあったからだ。




「ウルド…、この甲冑どうして焦げてるの?」


イオの痛い指摘に、ウルドの息が詰まる。

何か、何か言い返さなくては…。

思考回路をフル活用し、ウルドは一生懸命に言葉を探そうとする。



「―――あ………。

そ、そうだそうだ。
俺が甲冑の相手をしていたら、突然あいつらが炎に包まれたんだよ。

で、こんな有様だ…。もしかすると幽霊の仕業かも、な」


苦し紛れに口をついて出た言葉…。
無理矢理にこじつけた結果、突っ込みどころ満載の返事となった。