あの事件とは2年前だった。

大好きな彼氏がいた。

山田博人。

大好きだった。
大好きだった。
大好きすぎてわたしくるってた

おかしいくらい好きで好きで好きで。

だったのに急に冷たくなった。

「もうお前のこと 
  好きじゃないから。別れてくれ」

急に博人の口から発した言葉は
 私の死ねといってるくらいの強さで

急に視界が真っ暗になって。
自分が自分じゃないみたいで。

全然状況が判断できなかった。

今思うと馬鹿みたい。
馬鹿だ馬鹿だ馬鹿だ。

あんなに好きだった私は
どこにいってしまったんだろう?

そう思いながら途方に暮れて
歩き出した。

どこに歩いているのか
なんで歩いているのかさえ
わからなくなって。

たどり着いた先は
海だった。思い出の海だった。
初めてキスを交わしたこの海は
毎年きていた。

なのに今年はこれなかった。
別れをつげられたから――

3月の冬。
水温はすごく低くても
入りたかった。

ただがむしゃらに入りたかった。

「 つめったっ―」

一人でつぶやいた。
だれのなんの音も聞こえることは
なかった。

足の間隔がなくなっていった

このまま死んでしまえば。
死んじゃえば楽なんだろうな。

博人の別れの理由を聞かずに
死んでしまえば苦しくなくて
すむんだろうな。

こんなのかっこわるい。