「ねぇねぇ。堂本さん。」
 音楽の授業が終わって、教室でくつろいでいると話しかけられた。
「はい?…あ、赤里君!?」
 振り向こうとしたら、綺麗に整った顔が覗いてきた!
「え?どうしたの…?私に何か用?」
「あのさ、堂本さんって、俺のこと嫌い?」
―――大っ好きです!!!
 とは、言えずにあいまいに「嫌いじゃないよっ!」と答えるしかなかった。
「じゃあ、好き?」
「え、あ、、、いやぁ。。。」
「堂本さんって、あまり俺に話しかけてこないよね。いやだから?女の子とよく話す男子、嫌い??」
「えーと、そのぉ。」
 何!?今日は何の日なの!?
 剛貴君がこんなに攻めてくるなんて!
 しかも、あんまり喋ったことのない私に!!
「どうなの?」
「嫌いじゃないですよ?本当に。」
―――好きとか、本人を前にすると言えない!!でも、居ないときなら何だって言える!
 必死に言葉を探すけど、何も出てこない。
 教室の隅に居る女の子たちは、気づいてないフリをして、こっち睨んでるし。
「嫌いじゃないじゃなくてさ…――――」
「ふ、普通です!!!!」
「っ!!?」
 剛貴君の言葉を遮って言う。
 つい、大きな声になっちゃったけど、、、剛貴君、驚いたような顔してるなぁ。
「そっか、、、ありがとう^^」
「え?は、はぁ?」
 まさか、お礼を言われるとは思っていなかったので拍子抜け。
 『キーンコーンカーンコーン』
「おっと、昼休みか。じゃあね、堂本ちゃん☆」
 そういって、剛貴君は教室を出て行く。
 その後ろには、多数の女の子。
 「なぁに?あの子。」とか「そんなに可愛くないよねぇ?」とか「剛貴君のこと好きじゃないとか、おかしいでしょ。」「ねー、頭大丈夫かな?www」とか聞こえる。
 私だって、剛貴君のこと大好きだもん!!
「あの子は、可愛いよ。」
 それだけ聞こえた。
 私は、机に落としていた視線を急いで剛貴君のほうにやる。
 そしたら、剛貴君と目が合った。
 『またね。』
 そう、剛貴君の口が動いた気がした。
―――…気のせいだよね。うん。





 「だーれーかー、私にチョコパンを…。」
 お昼。
 いつも私はお弁当だけど、今日は購買のパンの気分だった。
 にもかかわらず、お財布を忘れるという大失態。
 莉紅に『チョコパン買ってきて!!』ってお願いしたら、『ほらよ、食パン。』って言って、どっか行っちゃったのです!!
 あの時、確かに顔が笑ってた。
 …もちろん、いやな意味で。
―――くっそう。チョコパンをあえて買ってこなかったなぁ。売り切れちゃうじゃん!
「あの、ばかっ!!」
 つい、机をたたく。
 しかたない、食パンを食べるしかないかぁ。









 放課後。
 痢紅は、サッカー部なので校庭へと走っていった。
「ふぅー。」
 なんだかわらないけど、今日はとにかく疲れた~。
「でも、剛貴君は、相変わらず素敵だなぁ~。」
「俺が何だって?」
「ひぇえっ!?」
 びっくりして、思わず大声を上げちゃった。
「だ、大丈夫?;」
 後ろを振り向くと、やっぱり、剛貴君が。
「えっと、大丈夫ですけど。何でここに?」
「いや、堂本ちゃんの姿が見えたから、お話しに来たんだ。」
―――そ、そんなっ、剛貴君が私とお話をっ!?何だろう、お昼のときと関係してるのかなぁ?
「えっと…。何か?」
「俺、堂本さんともっと仲良くなりたいな。だからさ、これから毎日一緒に帰ろう?」

「…………はいっ!?」

 驚きのあまり、私はあとずさる。
―――いやいやいやいや。おかしいでしょ!何で剛貴君が私と下校!?はっ、きっとお化けが帰り道に出るから、私を劣りにしようとしてるんだ!…いや、剛貴君は、そんなことしないし。。。
 私の思考回路がフル活用されている。
「な、何で、私なんかと?」
「だって、堂本ちゃんは俺にとってすっごく魅力的なの。」
「…み、魅力的?」
「そう。俺、歌上手い子とかすっげぇ好きなんだ。」
「歌?はてはて?それは、私のことなのですか?」
「うん、そーだよ。堂本ちゃん、すっごく歌上手いんだね。」
「いやー…。」
―――自覚ないぞ。
 私は、なんだか頭がおかしくなってきたらしい。剛貴君を好きすぎて、こんな夢までみてしまうみたい。
「夢じゃないよ?」
 私の思ったことを察したのか、剛貴君がすかさず言った。
「ゆ、夢じゃないんですか?」
「うん。ね、一緒に帰ろう?嫌だって言ってもダメだかんね?」
「え、あぁ。はい。」
 私は、素直に剛貴君の後を付いて行く。
「俺が、どこに住んでるか知ってる?」
「あ、し、知らない、、、かな…?」
―――まぁ、本当は、剛貴君の家知ってるけどね。
 私の、ストーカー的行動は、知られてはならない。代々、堂本家に受け継がれる、ストーカー気質。これは、生まれつきだからどうもならない。
―――このことを知られたら、もう一緒にいられない。だったら、バレないようにするだけ!!
 かつて、私のお父さんもお母さんにストーキングしていて、ゲットしたまで。私も、そうなる定めなのかも。
―――怖いけど、がんばろう!!
 そう思った矢先。
「あれ?赤里君のお家、こっちの道じゃなかったっけ?」
 剛貴君が違う道へ行こうとしたので、思わず止めてしまった。
「え?堂本ちゃん、俺ん家知らないんじゃなかったの?」


―――…………し、しまったぁあぁああぁぁああぁぁぁあぁああぁあぁっ!!



 どうなる、私の下校!!