朝早く、ベッドの中でくあっと欠伸をかく。
部屋の真っ白な壁にかけてある、お気に入りのオレンジ色の掛け時計を見ると、まだ4時30分を回ったところだった。

(まだこんな時間じゃん……らっきー)

喉が渇いているのを無視して、二度寝をしようとふとんに潜り込んだところで、コンコンと控えめな音が聞こえた。
不思議に思い部屋を見回すと、ドアの向こうから声が聞こえた。

「おい、悠。起きてるか?」

この声は、隣の家の幼なじみだ。笹原梓。あたしと同じ高校2年生で、本人はがっしりした男のくせに、女みたいな名前が恥ずかしいらしい。

あたしと梓は仲が良く、親公認で屋根を伝いお互いの家を行き来している。
いつもは通学が遅刻ギリギリのくせに、こんなに早く起きたなんて。

「なあ、に……」
朝特有のけだるさから、ふとんの中からゆっくりとくぐもった声を出す。その間にも、頭はとろりとろりと溶けていって、今にも眠りに落ちそうだった。