電車を待つ間、小雪は小さな紙袋をぎゅっとにぎりながら呟いた。
「私ね、今日は凄い楽しかったの。何日も前から楽しみにしてたの。…なのに龍ちゃんを困らせてばっかりでごめんね。」
「別に困ってねーよ。」
俺は笑いながら小雪を見ると
並んでベンチに座っていた俺の左手の服の袖をぎゅっとにぎり、小雪は下を向きながら
「だからね!私、龍ちゃんと2人でも楽しかったの!プレゼント嬉しかったの!お返しだってしたいの!…だから、だから…」
ガタンガタン…
小雪の言葉を遮るかのように電車がやってきた。
小雪は立ち上がると
「…だから、最後なんて言わないで。」
まただ。そんな顔を真っ赤にして泣きそうな顔して。
「こゆ…」
俺はそう言いかけたけど、小雪はやって来た電車にひらりと乗ってしまった。
「じゃあね、龍ちゃん。本当に、嬉しかったよ。ありがとう!」
電車のドアが閉まった。
言いたい言葉は言えた?
伝えたい思いは伝えた ?
そう思った瞬間、壮太の顔を思い出した。
答えのない思いを頭の中で巡らせながら、俺は自分の終電が来るまでずっと駅ビルの巨大ツリーを眺めていた。