それから、しばらく
部活はなかった。

久しぶりにワークルームに入った。
香澄が入ると、
なぜかしんとした。
「久しぶりだね、部活・・」
「・・・」
中にいたのは、晴香と光だった。
よく分からないけど、空気が重かったので香澄は部屋の外に出た。
(何、いまの空気・・・)
すると、中から2人の声がきこえてきた。
「ねぇ、光、本当なの?香澄と真志がラリーやってたって・・」
「うん・・・この前みたもん。」
(えっ・・・)
香澄はドキッとした。
「私なんて誘ってもやってくれなかったのに・・」
「きっと、二人しかいなくて、香澄が誘ったからやってあげたんだよ。」
晴香が光をなだめる。
「途中から入ったくせに、ムカツク・・・。」
光の声はいつもの声とだいぶ違った。
中から光が出てくるようだった。香澄は体が勝手に動くように、近くのトイレに隠れた。

心臓がどきどきした。
光は、自分のことをそんな風に思っていたのか・・。
香澄は、今にも泣きそうになった。
泣いたらだめだ、と思えば思うほど目が熱くなった。

しばらく香澄は、トイレの前で泣くのをこらえていた。

「香澄!」
晴香の声がした。
「・・・光は?」
本当は話したくなかったけど、その言葉が口から出た。
「塾あるって、帰った。」
「そっか・・」
「元気ないね?どうしたの。」
「・・・」
晴香は香澄のことを
影でコソコソ言っていたけど、
全部聞こえてたんだぞ、
と言ってやりたかったので
香澄は晴香にさっきのことを話した。
「あぁ・・・光、真志のこと好きだから・・・。」
好きだから、で終わらせるものじゃないと香澄は思った。
「・・・ムカツクって言ってたじゃん、光。」
「あの子、負けず嫌いだし、
 ちょっと性格悪いから・・・。」
「私・・・誘ったんじゃないから。
 真志が誘って来たの。」
「えっ、そうなの?」
「そうだよ。」
「ごめん・・私てっきり・・」
「いいよ。」
でも、光は許さない。
香澄は心で強く決めた。