アホだなぁ。

 モデルとかハリウッド女優とかヤングセレブとか。

 美容に莫大な金をつぎ込む女をゴマンと見てきた俺が、あんなチープな女に惚れるわけがない。

 と腹ん中で笑いながら岡崎美希を送り届けた。

 ひたすら彼氏ヅラしてやったら、岡崎はまんざらでもなさそうな感じだったし、これはいい兆候だ。

 前日の夜にはジジイ対策を考えながらベッドに入った。

 二十年間やられっぱなしといっても過言じゃないが、今回は出し抜けそうな気がする。


 「どこ行くんだ! 岡崎ん家はそっちじゃねぇだろ?」


 日曜の朝、俺はリムジンの中で鷹槻に声荒く訊いた。


 「お迎えには伺いません」

 「なんでだよ!」

 「それは……」


 いつになく煮え切らない鷹槻。


 「俺に何か隠してるだろう?」

 「いえ、何も」

 「今日はジジイに美希を紹介するから行くんだぞ。ヒロインがいなきゃ始まんねぇだろ」

 「そう……ですね。分かりました。今すぐ参りましょう」


 岡崎の家に行くと、支度ができてないから待てと言われた。

 何でも、用意周到な鷹槻が昨日のうちに日曜日にジジイのところに行くのは

 中止になったと、伝えていたそうだ。

 あの鷹槻が何の理由もなく、こんなことをするはずがない。




 ゼッテェ何かある。



 「気合い入ってんじゃん」


 支度を終えて家から出てきた岡崎に声かけたら、あいつバリッバリに緊張してやがった。


 「だだって、挨拶……でしょ?」


 岡崎でも、こんなんなるのな。

 しかしヒデェ格好だ。

 買い物なんかしてたら待ち合わせ時間に遅れそうだけど、

 こんな格好でジジイに会おうもんならウソがソッコーバレる。

 シャネルに寄らせ、適当に見繕って服を着せてみたら、馬子にも衣装だな。


 「スッスゴイね……いつも、こんな感じで買い物するの?」

 「するわけないだろ。めんどくせぇ」


 女と遊んでるときしか来ねぇよ。


 「ルージュ持ってるか?」