「泊まったのっ?」


 何の話し?


 「泊まった?」


 みんなの剣幕に、やっと一言刺すことができた。


 「昨日一緒に帰ったでしょぉっ!?」

 「家に帰」

 「帰ってないのっ!!」

 「帰」

 「ずるい!! 何で?」


 ちょっと私にも喋らせて~っ。


 「テメェら何やってんだ!!」


 ビックリするほど大きくて鋭い声が響く。

 教室は騒然となり、みな一様に同じ方を向いている。

 だけど席に座ったまま取り囲まれてる私には何も……


 「俺の女に何してんだよ?」


 こっ寿っ!?


 「あぁ? 言葉でリンチか? 最低だなテメェらは」

 「ちっ違」

 「違わねぇ!!」


 女の子たちが後ずさりし始めて、私はやっと寿の姿を捉えることができた。


 「お前さぁ、大人数で取り囲まれて至近距離で責められたらどう思うよ?」


 違うと言いかけた女の子一人を凝視しながら、寿は詰め寄っていく。

 責められてたわけじゃないって言わなきゃ!!

 けど、何か怖い……

 寿がいつもと違う。


 「言えよ……なぁ。怖いだろ?」


 ついにその子の背中が窓際の壁にピッタリとくっついた。


 「今、お前の顔に書いてあるよ?」


 無表情な寿の左手が静かに上に上がっていく。