奈々は大きなため息を吐く。

 私立だからって、この学校に通う全ての人がお金持ちってワケじゃない。

 私や奈々みたいに一般家庭の子だっている。

 流石に運転手つきの外車に乗って登下校するような人はいないけど。

 この地域が繁栄してないわけじゃないけど、都市っていうのにはまだちょっと、って感じだもん。

 恋して早々大きな壁にぶち当たった奈々。

 だけど壁は早いうちに破壊しとかないと、厚く高くなる一方だと私は思うよ。

 だって、私がそうだもんね。

 小学校から一緒だけど、年を追う毎に格好良くなる星哉にはファンがどんどんついてって、私なんかの手の届かない存在になっちゃったんだ。

 高校、ココにしたのも星哉が進学するからだし。

 案の定カッコイイ星哉は高校に入って更にファンがついて、ファンクラブまでできちゃった。

 告白くらいしとけば良かったのかな、なんて思ったこと今まで何回あったことか……

 だけど、できなかった。

 事情があったんだ。

 他の人には言えない、私の事情。

 小学生の頃、中学校のときでもいい。

 当時の私が今の私だったら、絶対告白してたと思うよ。

 そうこうしてるうちに、時は放課後。

 奈々のテンションは激下がり。


 「奈~々ぁ、元気出しなって」

 「出ない!! ぜぇったい出ないっ!!」


 そんなに張り切って言われても……


 「いーんだ、いーんだっ!! ウチはあきらめるんだっ!!」


 早っ。

 前方五メートルの地点に、移動性人だかり有り。

 俗に団体サンって言う。

 団体の中心は、彼だった。
 
 一日中よくも飽きないなぁと思いながら見ていると、白いベンツが校門の前に止まっているのが見えてきた。

 団体サンが車に近くなると、運転席から誰かが降りてきて、ドアを開ける。

 奈々の推測通りだったらしい。

 寿が団体の中心からスッと出て、誰かの手を握っていた。

 まるでこれからダンスでもするみたいに。

 パーマがかった茶色の髪の女の子が、優雅な仕草で白いベンツに乗り込んだ。

 続いて寿。