『致しますございます』??





 「お話しは寿から伺っております。寿にもわたくしにも、至らぬ点は多いかと
 存じますが、こちらこそよろしくお願い申し上げます」


 カタい、カタずぎるぞ鷹槻。

 一礼し、流れるような自然な動きでリムジンのドアを開けた。

 鷹槻のこんな挨拶には慣れてる俺はすぐに反応して岡崎の手を引く。

 奴はビクッと身体を強張らせたが、歩き出した。






 けど足、ガクガクじゃねえ?

 心ん中でヤベ~、とか思ってるかもな。

 知らねぇよ、仕掛けたのそっちなんだから。






 車に乗ったら朝食が片づいていた。


 『お話しは寿から伺っております』


 って話した記憶ねぇけど、今日のこと最初から全部知ってたのかよ。

 運転手が言うわけねぇしな。

 マサカ、監視カメラ結構前からついてて、夜中とか早朝とか、ヒマな時間に録画映像見てたとか?

 鷹槻ならありえる。

 どんだけだよあの男。




 あ~萎える。




 車乗ったせいで腹のムカムカも酷くなってきたし。


 「ねっねぇ、タカツキさんてどんな字書くの?」


 メンドクセェな。

 携帯を出して字を打つと、テーブルを挟んで電車みてぇに

 並んだ座席の向こう側にいる岡崎に差し出した。

 悪いけど身を乗り出して届けてやるほどの気力、今の俺にはねぇから。

 
 「はい」

 「ありがと……」


 岡崎はテーブルに手をつき、前屈みになって携帯を受け取ったのに文句は言わない。