「朝飯なんか食ったからだよ!!」

 「長年の生活で、お体の調子が狂ってしまったんですよ。これから少しずつ矯正していきましょう」

 「結構だ!」

 「すべては健康から始まるのですよ? 寿様には末永く彩並グループの」

 「分かったから、引っ込め」


 そう言ったのに鷹槻は後部座席に乗り込みやがった。

 気分悪いときに手ぇ焼かすなよ。

 すぐには怒る気も起こらなくて、ひとまずほっとくことにした。




 ガチャ




 岡崎、出てくるの早ぇよ。

 胃がムカムカして気持ち悪い中、俺は平静を装わなければならなくなった。

 鷹槻はバカじゃねぇから、状況察して出てくよな。

 新鮮な空気を肺いっぱいに取り込んでから歩き出した。

 門を開け広げて待っててやると、岡崎はすました顔で口を開く。


 「寿おはよう」

 「おはよう」


 微笑をくれてやったが、岡崎の表情は変わらない。

 マジ可愛くねー。


 「おはようございます、岡崎様」


 振り返ったら鷹槻が後部座席のドアの前で深々と頭を下げていた。


 「おっおはようごさいます」


 俺の手の上に乗る岡崎の手に力が入る。

 鷹槻が表を上げ、左右対称で完璧な紳士的微笑を浮かべた。

 「彩並寿の身の回りの世話を致しております、鷹槻心貢と申します。どうぞお見知りおきを」

 「岡崎美希ですっ!! よろしくお願い致しますございます」

 「プッ!!」


 噴き出しちまった。