「今日は随分とお早いお出掛けでございますね」

 「うるせぇよ。テメェ今日は助手席だ」


 ドアを開けて車の横で待ってる鷹槻に俺は言う。


 「朝ご飯を召し上がっていただけるのなら、構いませんが」

 「今日のメニューは?」

 「芳香豊かな高級バターとチーズをふんだんに使用したホットサンドでございます。
 デザートには野苺のジュレをご用意致しました」


 いらねぇっつーのに何でそんな手ぇこんでんだ、いつも。


 「朝からコッテリしすぎなんだよ」

 「申し訳ございません。寿様が何をしてもお召し上がりにならないので、
 わたくしどもも、何をご用意すれば良いものかと日々」

 「わーったよ! 今日は食ってやるから助手席乗れよ」


 あの野郎に文句言うと涼しい顔して嫌味返される。

 再教育しなきゃダメだな。

 車が動き出すと、スピーカーのスイッチが入った。


 「寿様、失礼致します。安全のため、車内には防犯カメラがついております。
 前部座席から映像を見ておりますので、わたくしがいなくとも、ご安心くださいませ」

 「鷹槻テメェいつの間に!!」

 「寿様のためになら、二十四時間いつでもご奉仕させていただくと心に決めておりますので」


 あの野郎っ。

 変だと思ったんだよ。

 ただ食うっつっただけで簡単に引き下がるから。

 食うと言ったからには食わねぇと、あとでエライ目に遭う。

 だけど汁物以外腹に入れたら、多分吐くし。




 クソ~っ。




 俺はしぶしぶピッチャーとグラスに手を伸ばす。

 何だよこれは。

 ドロッとした液体がタンブラーグラスに注がれていく。


 「沖縄産のマンゴーを北海道の牧場から買い付けた特製の牛乳で」

 「鷹槻もういい。ちゃんと朝飯食うからほっとけ」


 あいつの周到さと真面目さにはため息が出る。