「星哉が謝れって言ってくれたんだよね」

 「そうだったな」


 当時の記憶が感情とともに戻ってきて、グッと息をつまらせた私に星哉は静かにそう言った。

 私はその日、保健室に行くこともなくちゃんと最後まで

 学校にいたのに、リュースケは謝ろうともしなかった。

 だけど放課後、星哉がリュースケとその友だちをつれて、私のところに来てくれたんだ。


 「そういえば、あのときのお礼まだ言ってなかったね。ありがとう」


 星哉が受話器の向こうで照れくさそうに笑う顔が見えた。

 惹かれ始めたのはあの頃だったけど、

 当時は星哉とこうなるなんて想像もしてなかったよ。


 「いいんじゃない?」

 「何が?」

 「彩並を懲らしめてやれよ」

 「ありがと」


 私は卑怯な手を使った。

 星哉は優しいから、こんな話しされたら、絶対


 「やるな」


 なんて言えないもん。