「気ぃ遣ってくれなくていいよ? ただの失恋だし」


 ただの失恋て、奈々……

 私なら“ただの”なんて思えないよ。

 奈々は絶対まだイケるって。

 彩並寿を懲らしめ、且つ奈々とうまくいかせよう大作戦は

 スタートを切ってるし、うまくいきそうな気がするし。

 奈々には全部話した方がいい。

 隠してたら、あとで大きな問題になりそうだし。

 私は寿と話したことを、奈々に打ち明けた。


 「ゴメン、本当にゴメン。勝手なことしすぎたって思うよ。
だけど奈々の姿とか見てたら、止まらなくなっちゃって……その……ごめんなさい……」

 「もういいよ。ミッキーの気持ちは嬉しいし。だけど、全部なかったことにしよう?」






 なかったことに?

 奈々…………全部許すの?

 そんなの寿の思うツボじゃん。




 このまま野放しにしといたら、あいつは口が巧く相手を乗せて、

 モメごと起こさないように好き放題やるよ?


 「奈々、無神経なこと訊くけど……悔しくない?」

 「……悔しい……かな?」

 「でしょ? 絶対懲らしめるべきだって」

 「…………」

 「奈々は優しいね。けど私は絶対に許せない。大事な友だちをこんなにしてさ」

 「ミッキー……」


 おかしい状況になってるのは分かってる。

 一番悔しがっていいはずの奈々を、部外者の私が説得してるんだから。





 私、相当嫌いだなぁ彩並寿のこと。

 どうにかして、懲らしめてやりたい。

 こんなに熱くなってるの、絶対自分の過去のせいだなぁ……





 恋は美人の特権じゃないよ。

 なのに、同じ言葉を遣って告白しても、ブスは

 真剣な言葉で断られるんじゃなくて、爆笑で返される。