ガッチガチに固まった身体の中で、心臓はバックバク。

 顔からぶわっと火が出そうになって、いや~っ!!

 きっと頭から、しゅ~しゅ~白い湯気が……


 なっ奈々っ。


 今の状況どんな?

 星哉、私の後ろでどんな顔してるのっ!?

 そんな感情を込めて奈々を見る。

 奈々は……奈々は後ろを見つめている。

 愛惜しそうな顔をして―――――

 廊下が凄く、ざわざわしてる。

 トーンの高い猫なで声とか、聞こえてる。

 奈々が見てるのは私と星哉の後ろ。

 あいつがいる。

 気づかないフリ、しよう。

 彩並に夢中な奈々は都合よく私の言葉をスルーしてるし、私が星哉の存在に気づいてないことにすれば万事OK。


 「奈々~ぁ、奈々ちゃ~ん。そろそろチャイム鳴るよ?」


 こんなセリフ目の前で手をヒラヒラさせて言うんだろうけど、

 それは効果ないって朝知ったばかりの私は奈々の手を掴み、歩き出した。


 「あっと。も~ぉ、急に引っ張らないでよぉ……」


 あとは私が星哉に、いつもど~りにしてればいいワケでしょ?

 軽い軽い、ダイジョーブ。

 現実世界で演技することに関してはプロ級だもん。

 ディズニーランドの本物ミッキーも顔負けだよ!!

 ウッカリ星哉に告白しちゃった私はちゃっかりピンチ!? を切り抜けて、体育の授業に出席した。

 四月って一年生の頃からずっと団体行動なんだよね。

 回れ右とか左向け左とか。

 こんなことやって何の意味があるんだか。


 「五十嵐、右向け右だって言ってるだろ。そっちは左だ」

 「すっすいません」


 何でも卒なくこなす星哉が珍しく体育の先生に怒られてる。

 これって私のせい?

 何か嬉しいんだけど。

 星哉が意識してくれてるってコトだよね!?

 ピンチはチャンスっていうけど、その通りかも。

 ちょっとおしてみようかな!?

 体育の授業を挟んだら、ルンルンしてたのは奈々じゃなくて私。

 やっぱ上がるよね~。