「私は美希。いい? 分かったら家まで送って」


 家まで送れだぁ?

 ふざけんなよ。


 「私、今日はこのあと用があるの」

 「あのねぇ、俺は他の子の誘いを断ってあんたと会ってんの」

 「そう?」


 川を流れる水みてぇに受け流された。




 ムカつくんだけど。





 「運転手に言って道、戻らせてよ」

 「やだし」

 「私を連れ帰りたい?」

 「違う」

 「じゃあ送ってよ」


 何だよ!!

 何なんだよ、この女は!!

 俺はボタンを押して運転席と通信回路を繋ぐ。


 「はい」


 ドライバーの渋い声がスピーカーから流れてきた。


 「道、引き返してくれない?」

 「了解しました。学校でよろしいですか?」


 岡崎に目で合図を送ったら、奴は戸惑ったような表情を浮かべ、

 ちょっと考えてから交差点の名前を言って、そこを東方向へ曲がれと言った。

 運転手は必要最低限の会話を済ませると回線を切る。






 大した女だよ岡崎美希。

 いいよ、遊んでやる。

 だけど高くつくぞ?






 「美希、弁当つくって来いよ」

 「嫌」

 「テメェ俺をナメてんの?」

 「舐めない。マズそうだもん」


 思わず苦笑が漏れる。