「アンタどうかしてるよ」

 「お前もどうかしてんじゃねぇの?
 普通こういう場合は、俺ん家になんか行かねぇよ」

 「普通じゃなくて結構」

 「本題に入ろうぜ」


 嫌味を言い合う気なんかサラサラない。


 「奈々の前で、よく他の子とああいう会話できたよね。ホント最低」


 爆発しそうなものを抱えていた五時間目の前の表情とは違い、

 心底俺を軽蔑してるような冷たい顔をしていた。


 「俺はそういう男だ」

 「好きです」

 「何とでも言……あ?」





 こいつ今何て?





 「私とつき合って」


 あの冷たい顔をしていた女は無表情というに近い顔で

 俺のことを真っ直ぐ見て言った。


 「は? お前何言ってんの?」

 「お前じゃなくて美希、だから」


 躊躇いも恥じらいもない。

 何も込められていないような表情で、俺のことを見つめている。


 「アンタのことは寿って呼ぶよ?」

 「勝手に何言ってんの?」






 この女、マジ意味分かんねぇ。





 「何て呼べばいい?」

 「そういう問題じゃねぇだろ」

 「そういう問題だよ」

 「お前おかしい」


 突然のことに頭がついていけなくて、ありあわせの言葉を並べてるだけだ。

 会話の次元が低すぎて先に進まない。