「今、授業中じゃないのか?」

 「そうですね」

 「そうですね、じゃないだろう。許可証を見せなさい」


 俺と喋っていた助手席の警官が手の平を上に向けて肘を伸ばしてきた。


 「許可証?」

 「早退許可証だ」

 「あーすいません。転入してきたばっかなんで、そういうの、まだ持ってないです」

 「それは関係ない。早く学校に戻りなさい」

 「はい」


 厳格な表情のまま手を引っ込めた警官に、素直な返事をしてやった。

 パトカーを見送るつもりで立っていると、警官は不快そうな表情をする。


 「早く行きなさい」




 そういうことかよ。

 マジウゼェんだけど。




 俺は踵を返して歩き出す。

 ゆっくりゆっくり歩いてやったのに、パトカーはずっと

 ハザードたいたまま、俺を見つめていた。





 許可証貰って戻る気力もねぇ。

 授業なんか、もっと出る気ねぇし、保健室にでも行くかな。








 あ~メンドクセー。

 だから学校ってイヤなんだよ。





 「失礼します」


 礼儀正しく保健室のスライド式ドアを開ける。


 「はーい、あ……」


 先生は俺の顔を見て言葉を失った。






 白衣の裾から覗く、スラリと伸びた細い脚。

 ヌーディーなカラーではなく、ゴシックなブラックを選んだのは

 多分自分の魅力に気づいているせいだ。

 ガキ臭さを消した媚びないクールなアイメイクにも統一感がある。

 だけど蛍光灯の力を借りてキラキラしてる黒い瞳がアンバランスだ。