カバンを左肩に掛けた彩並寿は空いた右手をポケットに突っ込んで、踵を擦るようにして歩いてくる。

 寿は転校初日にして上履きの踵踏んでいた。

 どうせ前の学校で問題起こしたんでしょうよ。

 金にモノ言わせて貧乏私立に編入?

 ふざけんなてっての!!

 HRの間中、私は喋ったこともない男の悪すぎる第一印象に囚われて、怒りに満ち満ちていた。


 「ミッキ~、ゥチやっば~ぃのぉっ!!」


 教室から体育館に移動する道すがら、乙女街道まっしぐらな奈々の高すぎるテンションは私を更にイライラさせる。

 あんな奴のドコがいいわけ?

 惚れどころはドコよ?

 お金?

 って質問したらどうなるんだろう。

 彩並寿は何だかもう取り巻きが離れない。

 そりゃそうカモねぇ。

 都会の香りがプンプンするもん。

 転校生なんか天然記念物かも。

 マリモと一緒。

 マリモ……いいねぇ、今度からマリモちゃんて呼ぼうか?

 散々心の中で彩並寿をけなす私を知らない奈々は、


 「どこの高校行ってたのかな~。なんでココに来たんだろっ。訊いてみたいな~ぁ。ケド、同じこと訊かれすぎちゃってて、イライラされるかな~」


 とナカナカ積極的にはなれない乙女心と戦っている。


 「星哉クンとどっちがいい」

 「はっはぁっ!?」


 急な質問に大声を出したら奈々はビックリして立ち止まる。


 「美希……どうしたの?」

 「いやあの……」

 「マサカ……マサカ美希も……彩並クンを……」


 奈々の瞳がウルウルきてる。

 何で? もうそんなにご執心なの?


 「違いマス!!」


 私はガッチリ否定。

 あんな奴のことを誤解トカ、たまったもんじゃない。


 「私は星哉一筋だから!」

 「え!!」


 え!?

 頭がその声を解析する前に、私の心臓、ドクッと反応。






 きや~~~~~~~~~~~~~ぁっ!!


 星哉……星哉星哉セイヤーッ!!