そのドライなトーンは、まるで他人のことを話してるみたいに感じる。

 この男はどこまで私を怒らせば気が済むのっ?


 「あのさぁ、奈々は純粋ないい子なの。彩並くんみたいな人が遊んでいいような」

 「知ってる。だからヤんなかったんだよ」

 「やんなかった? 何を」


 何も考えないで問い返した私。


 「あ? セッ」


 恥ずかしげもなく口に出そうとする寿。



 「バカッ」


 訊かなくたって、すぐに回路は繋がった。


 「バカ?」


 すごい不快そうな声で反すうされた。


 「ごっごめん……なさい……」


 う~、寿の顔が見られない……

 しかも、私の顔多分真っ赤だ……

 カッコ悪い。


 「何、ミッキーはそういうの、苦手?」


 寿の声色が浮わっついた感じで、私をからかおうとしてるのがよく分かった。


 「にっ苦手とか、そういう問題じゃ、ナイ、でしょ??」


 そうじゃない、そっちじゃないよ今話すべきコトは。


 「そうだなぁ。流れがあって、どうしようもないときもある」






 流れ?

 どうしようもない?

 奈々とのことも、そうだって言いたいわけ?

 え?

 だけどヤってないって……