グングン歩く私の後ろを寿がついて来るっていうのは、多分、もの凄く奇怪な光景。

 いろんな人が好奇の目で私たちを見つめている。

 でも、そんなのにかまってらんないから!


 「寿くんドコ行くの~ぉ?」


 群がってる女の子たちを、


 「さぁ?」

 「授業始まっちゃうよ」

 「もうそんな時間? 先生に、保健室行って来るっつっといて」


 とか言いながら交わし、私が教室で話しをしようとしなかった意図を汲んでくれてるみたいだった。

 私と寿を二人っきりにさせないためにか、何を言ってもついて来るような女の子には、最後、屋上の扉の前で、


 「なぁ、授業終わってからつき合えよ? その話しおもしれぇ」


 とか言って、円満に別れてた。




 これじゃあ寿、人気が落ちないわけだ。

 ていうか、逆に上がるよ。

 ヤリ捨て用の女の子にも、うまいこと言ってるんだよね。

 奈々はそれに引っかからなかったってワケだ。




 みんなの前で化けの皮を剥いでやりたいけど、それやったら多くの人が傷つく。

 屋上の扉のすぐ外に、聞き耳立ててる人がいるかもしれない。

 私は屋上の端の端、フェンスのまん前で寿を待った。


 「あ~ダルッ。高校生も大変だな~」


 フェンスにもたれ掛かり、大きなあくびをしながら遥か上空を見上げる寿。


 「あのさぁ、奈々のことなんだけど」


 態度が気に食わない。

 朝、反省してるって言ったよね?

 全然見えないよ。


 「何て聞いてる?」


 これも彩並寿の手口?


 「私は彩並くんの話しを聞きにきただけ。大筋は分かってるから、言い分があったら言って?」

 「奈々ちゃんが何て言ったのか言ってくれなきゃ、反論できねぇんだけど」


 そっそれも……そうか。


 「本気だったのに、ヤリ捨てされたって泣いてたよ」

 「あ~、なるほど……それじゃ迎えに行っても無駄だな」