「それで……俺に何か用?」


 まだ照れてるのか、歩きながら星哉は言う。


 「相談があるの。しかも、すぐに答えが要るやつ」

 「何だそれ」

 「奈々のことなんだけど……昨日、寿と帰って……え~とその……」
 

 星哉の前ではあんまり変なこと、言いたくないんだけど……仕方ないよね。


 「ヤられて、捨てられちゃったみたいなの」

 「ヤッヤリ捨てっ!?」


 星哉があんぐりと口を開け、大きく見開いた目で私を見た。




 そりゃあビックリもするって。

 編入から六日目でクラスメートをヤリ捨てって、ありえないもん。




 しかも、奈々以外にもお持ち帰りしてるんだよ。

 それなのに他の人は何も言わないし、取り巻きも依然として減らないし。


 「だけど今日の朝、寿が迎えに来たんだよ!!」

 「何だそれ。意味が分からない」

 「私もだよ。何かあったのは事実なんだけど、奈々は詳しく喋らないし……
 でも、寿の言ったことが変なんだよね。奈々の話と噛みあわないっていうか……」

 「何て言ったんだ?」

 「娼婦が欲しいわけじゃないって」

 「ん~」


 星哉がうなって顔をしかめ、腕組みをする。


 「お手上げって感じで……とりあえず、奈々には今、保健室にいて貰ってるんだけど」

 「彩並からも聞いてみないと分からないんじゃないか?」

 「そう、だよねぇ……」

 「もう一度、俺が新山の話を聞いてくるから、岡崎は彩並から聞けよ」

 「こっ寿からぁっ!?」

 「何かまずい?」


 まっまずい……よ……

 だってさっき……私、あいつを怒鳴っちゃったし……ね?



 キーンコーンカーンコーン



 予鈴が鳴った。

 あと五分で朝のHRが始まっちゃう。


 「新山、保健室だっけ?」

 「うん」

 「じゃああとでな」

 「うん……」


 寿に、私が話しを聞きに行かなくちゃならなくなった。