『俺が欲しいの、やっぱ娼婦じゃないから』


 どういう意味よ??


 「奈々さぁ……私に何か言ってないことある?」


 うつむいて固まっている奈々の肩に手を置いた。


 「ない」

 「寿がさっき言ってたことって、どういう意味?」

 「分かんないよ……全然分かんナイ」


 今にも泣き出しそうな声で奈々は押し黙る。


 「ねぇ、奈々……寿が言ってることと、私が
 奈々から聞いたこと、噛み合わないんだけど」






 奈々は何も話さない。

 喋れないのかもしれない。

 時間が、必要だった。






 そして多分、第三者の力が必要だった。



 私たちはとりあえず学校に行ったけど、奈々は教室には行かなかった。

 大丈夫だって言ったけど、私が、行かせなかったんだ。

 星哉の朝練が終わる頃を見計らって格技場の前に行く。

 間もなくして、ぞろぞろと格技場から人が出てきた。


 「おっ岡崎!!」

 「おはよう。お疲れ様」

 「おっと~ぉ。星哉彼女できた?」


 部活仲間が星哉のことをからかいだす。


 「まぁ……そう」


 星哉は照れ隠しに頭を掻いた。

 私だって恥ずかしいよ。


 「すぐ紹介しろって!!」

 「今度な」


 こういうのが苦手な星哉はすぐにその団体の中から出てきて、違う方向へ歩き出した。

 私はそれについて行く。