もう三時。

 私もそろそろ寝た方がいい。

 布団は、ないけど、こんなこともあろうかと、厚着してきたんだよね。

 その前にお手洗いを借りよう。

 奈々の部屋のドアを開けたら、布団が一式積み上げられていた。




 おばさん……

 気遣って声かけないでおいてくれたんだ。

 朝、お礼を言わなくちゃ。




 おばさんのお陰で、私は風邪を引くことなく、その夜はよく眠れた。








 明くる朝、奈々はいつもみたいな元気な姿を―――演じていた。

 許さない。

 奈々が何て言ったって、私は絶対にあの男を許さない。

 覚悟しなよ彩並寿!!

 学校に行くための支度を済ませ、私は奈々と一緒に家を出た。

 その瞬間、目を疑った。

 奈々の家の前に止まるのは真っ白で不自然に長い車。

 左右のヘッドライトの真ん中には、かの有名なブランドマーク。

 何で?

 あいつは、まだ奈々を苦しめる気?

 困惑して立ち尽くしている間に、車の後部座席がゆっくりと開いた。

 中のブレザーを肘まで捲くり上げた男が中から降りてくる。


 「奈々ちゃん、迎えに来たよ」


 ゆっくり歩いて奈々と私が立つ門の前まで歩いてきた。

 マジで何なのこいつ?

 ありえないんだけど。


 「彩並くん、頭おかしいんじゃない?」


 吐き捨てるように言ってやると、寿は驚いたような演技をしてみせた。


 「何で?」

 「昨日、奈々から聞いた」

 「いろいろ誤解してるだろ」


 誤解?


 「しらばっくれないで!!」

 「ミッキー、もういいよ。行こう」


 怒鳴ったら、奈々が悲しそうに笑いながら、私を見つめた。

 私だけを、見つめていた。


 「ごめんね彩並クン、一緒には行けない」

 「そっか。先に行って待ってるな」


 待ってる??