「美希、夕ご飯」

 「いらない」


 クレープの余韻なんかとっくの昔に消えたのに、何も口に入れたくなかった。

 お風呂に入って部屋に戻ると携帯がピコピコ光ってた。





 着信:奈々、奈々、奈々。

 メール




 【いつでもいいから、ヒマになったらMAILちょうだい】


 どうしたんだろう。

 今日、寿と一緒だったんだよね。

 良い報告……ならきっと、着信履歴だけになる。

 私ならそうする。





 奈々、何があったの?





 緊張しながら奈々にメールすると、すぐに電話がかかってきた。


 「奈々っ大丈夫!?」

 「ミッキ~~~~、うわ~ぁん」


 姿が見えないのに、抱きつかれたような感覚が私の身体に蘇る。


 「何があったの?」

 「もうダメだよぉ~~~」


 ダメだ、ラチがあかない。


 「今、部屋?」

 「うん……」


 頼りなげな肯定が電話を切るのを躊躇わせたけど、

 通話中のこのまんまじゃ支度ができない。


 「そっち行くから、泊めてね?」

 「ミッキ~~~~~~~ィッ!!」


 声のボリュームが大きくなったのを了解と受け取って電話を切った。

 制服を持ち、学校の支度をしてお母さんに奈々の家まで送って貰う。

 私が行ったら部屋で奈々はタオルを目に当てて、

 大きなぬいぐるみを抱えていた。


 「う~っ、ミッキー」


 真っ赤に腫らせた目で鼻をすする奈々。

 考えるより先に身体が動いて、私は奈々を抱きしめる。

 華奢な奈々の肩、火照った身体が震えてる。

 奈々は涙もろいけど、こんなになくなんて尋常じゃないよ。


 「何があったの?」


 寿の、部屋?

 奈っ……奈々――――?

 まさか、もしかして……