ピクッと動く瞼がその位置で固定された。


 「火傷した?」


 問いに反応して微かに左右する頭。


 「聞こえねぇ」


 そう言った俺の親指はまだ新山の唇の上だ。


 「口が火傷したかって訊いてんの」


 強めに言ったら唇に力が入り、顔が少し歪んだ。

 そして、静かに渓谷は開き始める。






 粘膜が現れ、俺の親指は湿った。

 しかし下唇のインラインを撫でた瞬間、扉は閉まる。





 「俺の指食ってんじゃねぇよ」


 従順な女はすぐさま口を開いた。







 白い歯の下で液にまみれた艶やかな塊が、 

 ピクピクと誘うように動いている。







 唾液に濡れた親指を新山の口にこすりつけるようにスライドさせながら、




 その誘いに乗ってやった。






 生暖かく暗い密室の中で、あの塊と自分の舌を絡ませる。

 その間に俺の左手はくだり、制服のスカートからYシャツを引き出して、






 じかに新山の感触を試す。





 滑らかな肌を滑らせながら上昇すると、どこかに感じるポイントがあったらしく、




 鋭敏に筋肉が動いた。





 でも俺の舌にギロチンが当たり、濡れた扉が閉じそうになる。






 刹那、





 俺はすべてをやめた。

 左手を引き抜き新山の前に立って見下ろしたとき、

 新山は何とも言えないような顔をして、下唇を噛んでいた。




 微笑みを浮かべながら左手を差し出すと、新山は寂しそうに視線を逸らす。


 「俺が欲しいのは娼婦じゃない」


 新山の手を取って引き上げる。