机にソーサーとカップを戻して振り返ると新山は微動だにせず、

 ただ口元だけを押さえている。

 ゆっくりと近づきながら俺は静かに観察を始めた。




 新山の中にあるのは恐怖か?

 混乱か?

 それとも期待か?





 うつむいてねぇで見せろよ、その顔。

 ベッドから脚を直角にたらす新山の正面で立ち止まり、

 払いきれていない右サイドの髪に手を伸ばす。



 俺の手を止めようと思えばすぐできるのに、新山は何もしない。



 髪を払った左手を新山のうなじに滑らせた。

 都合よく曲がった右肘の下に左腕を入れ込むと、

 俺の身体は女の息遣いを肌で感じ始める。



 密着した身体に潰された新山の利き手。

 もう一方の手もしっかりブロックして自由を奪った。




 こいつ、覚悟してたのかよ、何の抵抗もしねぇ。




 新山を寝かせてから改めて顔を見ると口元に当たってた
 
 右手はそのままに、目をギュッと閉じている。

 試しにその手をどけてようとして持ってみると、小刻みに震えていた。




 お前の中にあんのは怯えだったんだな。




 左手で新山の頬に触れ、紅の唇を親指で静かになぞる。



 ゆっくりと、優しく―――