家のドアは自分で開けて、新山を先に入れた。

 レディーファーストって日本じゃあんまり浸透してないらしいけど。


 「広いね」

 「一人で暮らすにはな」

 「一人暮らしなの?」

 「まぁ……基本的には」


 鷹槻は執事だからルームメイトにはならない……ことにしたい。

 靴を脱いで廊下に上がると、床はひんやりとしていた。






 「寂しくない……んですか?」






 新山は恥ずかしそうに僅かにうつむく。


 「いつも回りに大勢いたからなぁ。それ考えると……
 特に夜とか?」


 玄関サイドの棚に手をかけて靴を脱いでいた新山の動きは止まらなかった。


 「一番奥の部屋に、先行ってて」


 部屋まで案内してやるのをやめにした。

 初めて来た家を歩き回るのは、どんな奴でも緊張する。

 そしたらどんなに演技がうまい奴だとしても、少しはボロが出るだろう。





 そして俺も少し、一人で考える時間が欲しかった。




 キッチンに着き、気取るを火にかける。

 青の炎がステンレスを焼き、空気をあぶっていた。

 新山は俺にまとわりつくような押せ押せ女じゃねぇし、

 かといって、ひたすら想いだけを募らせていく奥手な女でもない。

 人の家まで着いてきて、寂しくないかなんて挑発的なこと

 訊いたかと思えば、答えた俺の本意には気づいてねぇ。




 演技……じゃないよな。




 寂しくないかって言った自分に照れてるし。

 俺を男じゃなく、憧れの対象として見てんのか?

 だとしたら、車ん中のこととかも、説明がつく。








 まだ相当なガキなのか?

 コイツは。